31文字の世界
野暮用で御茶ノ水から神保町まで歩いた。
晴れた日でよく乾いた坂道を下っていく道のり。
書店に入ってなんとなく短歌コーナーへ足が向く。
31文字で世界をつくる短歌は、俳句よりも作為的に思いを込める余地があり、詩よりも言葉そのものの意味の広がりを味えて、わたしにはちょうどよいサイズな感じがする。
最近の短歌作家で面白い人はいないかと棚を眺めていて目に止まったのが、堂園昌彦の「やがて秋茄子へと至る」。
美しい装丁と、作者が19歳から29歳の時につくられたというそのナルシスティックでロマンティックな青っぽさをとても好ましく思った。やはりこういう歌は若い時にしか作れないよね、と思う。
余裕ができたら短歌をはじめるのもよいかも、と思いながらロシア料理屋でボルシチにサワークリームを溶く。その甘やかで非現実的なピンク色。