2008-01-01から1年間の記事一覧

メタと8mmと夜のネオンと「闇打つ心臓」

先日「闇打つ心臓」という映画を観た。長崎俊一が1982年に製作した同名の8mmフィルムの映画を自身でリメイクした作品だ。 すでに存在する作品をリメイクするやり方としていくつかの方法があるけれど、長崎はその中でもかなり野心的な方法を用いた。リメイク…

わたしは紅茶ならリプトンが好き

メディアやかつての人の追体験じゃなくて新しい経験と、それに喚起される言葉にすら落としこめないような感情。固有名詞や軌跡やフィルターのかかった感覚やその他色々なものに乗っけてしまった方が安易で意外と楽しかったりするけどね。 リプトンの好きなと…

今日のごはんと失いゆくもの「羊をめぐる冒険」「ダンス・ダンス・ダンス」

風邪をひいて寝込んでいた時に久々に読み返してみた。大学生の時の日本文学の講義で、私はこの本についてのレポートを書いた。今まで失ってきたものとこれから失われるものについて。私はこれまでに(たくさんの人と同様に)色々なものを失ってきたから。喪失…

夢の続きを「シュルレアリスムとは何か」

シュルレアリスムとは日本では超現実主義と訳される1924年のアンドレ・ブルトンのシュルレアリスム宣言に始まる芸術運動である。 その中でわたしたちがまっ先に思いつく作家といえばサルバドール・ダリだろう。時計がチーズみたいに溶けてる絵を書く、非現実…

映画史に残る愛の告白「気狂いピエロ」

秋だからみんな黒もしくはグレーの服を着ていて何か重い感じ。 君の乳房と太ももは感動的だとフェルディナンは言ったが、浅い眠りの後の夕暮れを少しばかりすぎて薄暗くなった海辺でふいに発せられたその言葉は、愛の告白の場面として間違いなく映画史に残る…

おなかにじんましん

おなかにじんましんができてかゆいのでぼりぼり掻いている。一昨日ぐらいがピークでそれより大分良くなったけれど、今年の風邪はじんましんっぽい皮膚のぶつぶつとセットなのだろうか。友達にも似たような症状があると聞いた。じんましん治りかけの腹は痛々…

キュウリを噛む音がやけにリアルだった「ある朝スウプは」

「ある朝スウプは」は2005年のPFFでグランプリを穫った作品だ。 木漏れ日が女の顔に当たってゆらゆら揺れていた。ラストの、とても長い食事のショットは女の「他人だものね」という独り言で終わる。漬け物を奥歯で噛む音はしかし鳴り止まず、それだけが希望…

私はやっぱりつけまつげを付けた女にはなれないし、ならない「いづみ語録」

例えば私が、と想像してみる。薄暗い部屋のベッドの上で。 例えば私が、あの黒々としたまつげをつけゴールドのべっとりとしたアイシャドウで囲われたうつろな目をした女(それはまぎれもなく女。少女でも女性でも娘でも母でもなく女。)だったらと。 その想…

今日もまた暑かったね

誕生日。それはもちろん特別な日として送られることはなくただ淡々とすぎてゆく。しかし何となく新しい気持ちになる。お正月を20倍くらいに水で薄めたような。やはり私が生まれた日だから。そう認識しているから、うすぼんやりと暗く分厚い雲のために全ての…

ポップカルチャーとしての小説「二〇〇二年のスロウ・ボート」

古川日出男のこの小説は結構好きだ。 村上春樹の「中国行きのスロウ・ボート」の”リミックス”。 小6の彼女の背後にいくつもの映画が重層的に折り重なっているっていう視点とか、語り口にノイズが混じりひっかかる感じとか。 そして、個人的には「あとがき」…

tumblrについての一考察

2007年色々なことを始めた気がするけど、その中で一番重大なものごとの一つはtumblrだった。勝手に顔も知らない人のtumblrをフォローして気に入った画像や文章をリブログしていくあのゆるい行為を通して、大げさに言えば、わたしはインターネットという漠然…

2008って全部丸っぽい数字だから見た目かわいいけどクールじゃない

元旦の朝食兼昼食はおせちとお雑煮、夕食はご飯と魚と筑前煮と我が家では決まっている。おせち料理のきんとんは栗ではなくさつまいもで、お雑煮には凍み豆腐とかが入っていてそれは毎年毎年変わらない。 1月1日に毎年食べる変わらないものは毎年降る雪の匂い…