キュウリを噛む音がやけにリアルだった「ある朝スウプは」
「ある朝スウプは」は2005年のPFFでグランプリを穫った作品だ。
木漏れ日が女の顔に当たってゆらゆら揺れていた。ラストの、とても長い食事のショットは女の「他人だものね」という独り言で終わる。漬け物を奥歯で噛む音はしかし鳴り止まず、それだけが希望というほど大袈裟なものではないがこの薄ら寒い現状からこれから先へとつながる唯一のもののような気がした。
望遠のレンズで撮られたためにうすぼんやりとした男と女の顔が揺れる。鑑賞者と現実に一定の距離を置いているという意味では静かでゆるやかな映画。とりあえず私個人の領域は侵さないし乱さない。
どことなく昔の映画っぽい感じはする(キャストのせいかも)が、完成度は高いしそれなりに見応えがあった。