メタと8mmと夜のネオンと「闇打つ心臓」

先日「闇打つ心臓」という映画を観た。長崎俊一が1982年に製作した同名の8mmフィルムの映画を自身でリメイクした作品だ。

すでに存在する作品をリメイクするやり方としていくつかの方法があるけれど、長崎はその中でもかなり野心的な方法を用いた。リメイク作品に前作の登場人物を同じ役で登場させた上に前作の映像自体も使用したのだ。

前作の8mmフィルムの質感と今作の35mmのそれはやはり決定的に異なっている。結果から言って前作のざらついた映像は「過去」のものとして遠くに位置づけられているわけではなくむしろその逆で現在の静かな映像よりもリアルに感じられた。そのリアルな映像が過去の回想というよりも作品自体のメタ的要素としての機能を持っていて、82年の出来の延長線上に現在の若い男女の物語と中年になった室井茂と内藤剛志の肉体があるというよりも、時間の線的流れを越えて、現実とぶつかっている感じがした。

この映画の主役はやはり男女の気持ちとか肉体とかではなくて空虚な部屋そのものでそれは8mmであろうと35mmであろうと変わらずに冷静で客観的だ。しかも、この映画の終わり方は結構クールだと思う。最後のショットとか。

映画館を出るとすっかり暗くなっていて、歓楽街の街の安っぽいネオンがやけに実体を持って目にとびこんできた。大友良英サントラがとても良くて、おもわずパンフレットを購入。

闇打つ心臓 Heart, beating in the dark [DVD]