映画史に残る愛の告白「気狂いピエロ」

秋だからみんな黒もしくはグレーの服を着ていて何か重い感じ。

君の乳房と太ももは感動的だとフェルディナンは言ったが、浅い眠りの後の夕暮れを少しばかりすぎて薄暗くなった海辺でふいに発せられたその言葉は、愛の告白の場面として間違いなく映画史に残るだろう。

「ジュークボックスでアンナ・カリーナはダンスをしていなかったじゃないか」

分かりづらいということは時にすごく魅力的だ。この映画からおよそ40年経った今でもそれは新鮮で、哲学的台詞だけではなくハリウッド的映画文法を無視していることが影響していることは明白だ。なぜそんなことをするのかといえば、奇妙な断絶感、それがアクション繋ぎなんかよりよっぽど「リアル」に近いということでしょう。

やっぱかっこいいよなぁと思う訳だが、私が一番好きなのは車で走っていてフロントガラスに非現実的な色合いをしたネオンの光が反射しては消えてゆくところ。それは映画は光の運動だというあまりに自明な事実を私に再認識させてくれる。

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