日々のこと

31文字の世界

野暮用で御茶ノ水から神保町まで歩いた。 晴れた日でよく乾いた坂道を下っていく道のり。 書店に入ってなんとなく短歌コーナーへ足が向く。 31文字で世界をつくる短歌は、俳句よりも作為的に思いを込める余地があり、詩よりも言葉そのものの意味の広がりを味…

洗濯

洗濯が好きで、そして嫌いだ。 洗濯、すなわち、洗うそして濯ぐ。 「濯ぐ」という言葉の持つのどかさと清涼感が好きだ。 最近はフレグランス系の液体洗剤の隆盛により、時代遅れ感がでてしまった粉洗剤の匂いと、白に混じる少量の青の非日常的な鮮やかさが好…

蛍光灯3本ぶんの多幸感

蛍光灯が切れたので交換した。わたしの部屋のリビングは直管の蛍光灯3本で照らされることになっているが、そのうち2本が切れるまで交換を延ばし延ばしにしていた。怠惰、あるいは冒険。蛍光灯1本でみる景色と3本でみる景色の違い。それまで1本だった部…

アクリルの箱

「減るもんじゃないし」というよく聞く文句は嘘で、エントロピーの法則が宇宙にある限りこの世界で減らないものなどない。体験はその回数を重ねるほどに個々の重みきらめき特別さを減少させてゆく。 なので、もしその体験を絶対的なものにしたければ、もう何…

好きなひとがいる

白いポロシャツがかたちづくる華奢な肩、筋ばったくびすじ、唇を少し歪めて話す癖。その奥底にレイヤーになってある沖縄猫アンゲロプロス。

いまださめず

渋谷の地下鉄の改札の前では不細工なおとことおんなが体を密着させそのからだとからだの間にはいかなる意味も物質も入れまいという勢いで佇んでいる。いつもの光景。 すごく不細工なおとことおんなの日やちょっと不細工なおとことおんなの日とかその日その日…

ヘッドフォン

ヘッドフォンで音楽を聴いていると、当たり前だけどそれは自分にしか聴こえず、周囲の人にはわたしがどんな音楽が聴こえているのかということは全く分からない。でも、わたしの中では色んなリズムやグルーブが響きまくりでもうすごいことになっちゃっている…

鯵のひれの赤は血液の赤

鯵をよく見るとそのひれの付け根はほんのりと血液が透けていて赤く、それは注視しなければ分からない。このように最近の私は所帯染みていて、人が食べるはずの夕食などをその人たちが食べるタイミングに合わせて作ったりしている。 桜がまだ咲かないね、いや…

暑いのと寒いのと

寒いと悲しくなる。暑いと悲しくはならない。 寒いと緊張する。暑いと弛緩する。 寒さにあるのはある種の深刻さ切実さでそういうものが続くのはやっぱり嫌だなぁ。 だけどそんな私の趣味など反映されずに地球はというか地球の日本部分は、 明日もきっと寒い…

夕方に見る夢に たいていうなされる

小さい頃住んでいた家の半径50mから4kmあたり。わたしは幼くもあり現在の年齢でもある。要するに、私の歴史のあらゆる断片がつまっているそんな私。その断片のいずれもの濃度も同一で等価値だ。 混沌とセックスと黒い霧が背景にあって、私は確信を持って何か…

深夜の無目的会話メモ

何かを背負ってる 孤独感 現代にシンクロ=予言 ほとんど暴力的に思い出す 匂い、空気、湿度 遠くから ぐるぐる回る スピード感

ガラスは味がしなかった

へんな夢を見た。 私は自分じゃない他の人間という設定で、ガラスをぽりぽりと食べていた。 ガラスはおはじきよりもやや薄くカップヌードルの容器の底くらいの大きさの円形でやや青みがかっていて、口に入れると冷たくて滑らかだった。 その滑らかなガラスを…

自転車の速度

夕暮れ、自転車で町を走る。川沿い、小さな橋、並木道、路地裏、を選んで行く。自転車で進む時速と自分の思考のスピードがリンクしていて気持ちいい。道はわたしに選ばれていく、と何となく思う。いつも何かを選びとるのはわたしで、この目で世界を切りとっ…

芝生と西日

春が近づいてくるのは匂いで分かる。難しいことばかり考えていたもしくは、何も考えていなかった。 私の中で蓄積された春の経験、別れとか出会いとか散歩とかプリーツスカートとか好きな先生とかおかっぱの女の子とか鳥がいる河原とか「もう会えないね」「会…

雪ゆき「椰子・椰子」

子供がいる女の人の一年間の話。モグラが訪ねてきたり子供を折り畳んだりするかなり非現実的な生活でそれを淡々とした語り口で綴ってゆく。川上弘美の中では2番目くらいに好きな小説。 きっと子供とかもほんとはそんざいしてない。まさしく眠っている時に見…

階段のほこりと六花亭のチーズクリーム

実家に帰って家がかつての自分の記憶よりも古く汚くなっていることに切なくなる。当たり前だが、両親も祖父母も年をとる。そのことを確認する作業を実家に帰る度にしなければいけない。 お正月はやはり新鮮で改まった気持ちになるし、澄んだ空気を感じていつ…

わたしは紅茶ならリプトンが好き

メディアやかつての人の追体験じゃなくて新しい経験と、それに喚起される言葉にすら落としこめないような感情。固有名詞や軌跡やフィルターのかかった感覚やその他色々なものに乗っけてしまった方が安易で意外と楽しかったりするけどね。 リプトンの好きなと…

今日のごはんと失いゆくもの「羊をめぐる冒険」「ダンス・ダンス・ダンス」

風邪をひいて寝込んでいた時に久々に読み返してみた。大学生の時の日本文学の講義で、私はこの本についてのレポートを書いた。今まで失ってきたものとこれから失われるものについて。私はこれまでに(たくさんの人と同様に)色々なものを失ってきたから。喪失…

おなかにじんましん

おなかにじんましんができてかゆいのでぼりぼり掻いている。一昨日ぐらいがピークでそれより大分良くなったけれど、今年の風邪はじんましんっぽい皮膚のぶつぶつとセットなのだろうか。友達にも似たような症状があると聞いた。じんましん治りかけの腹は痛々…

私はやっぱりつけまつげを付けた女にはなれないし、ならない「いづみ語録」

例えば私が、と想像してみる。薄暗い部屋のベッドの上で。 例えば私が、あの黒々としたまつげをつけゴールドのべっとりとしたアイシャドウで囲われたうつろな目をした女(それはまぎれもなく女。少女でも女性でも娘でも母でもなく女。)だったらと。 その想…

今日もまた暑かったね

誕生日。それはもちろん特別な日として送られることはなくただ淡々とすぎてゆく。しかし何となく新しい気持ちになる。お正月を20倍くらいに水で薄めたような。やはり私が生まれた日だから。そう認識しているから、うすぼんやりと暗く分厚い雲のために全ての…

tumblrについての一考察

2007年色々なことを始めた気がするけど、その中で一番重大なものごとの一つはtumblrだった。勝手に顔も知らない人のtumblrをフォローして気に入った画像や文章をリブログしていくあのゆるい行為を通して、大げさに言えば、わたしはインターネットという漠然…

2008って全部丸っぽい数字だから見た目かわいいけどクールじゃない

元旦の朝食兼昼食はおせちとお雑煮、夕食はご飯と魚と筑前煮と我が家では決まっている。おせち料理のきんとんは栗ではなくさつまいもで、お雑煮には凍み豆腐とかが入っていてそれは毎年毎年変わらない。 1月1日に毎年食べる変わらないものは毎年降る雪の匂い…

きちんと

きちんと生活をすること。 正しいものをみること。 時間を大切に使うこと。 一ヶ月は本気でがんばること。 逃げないこと。

Google様

神様は科学や哲学その他人間ではどうしても説明できない世の中のあらゆることのその理由として存在する。世界をすべて漏らすことなく知りたいという人間の欲望を体現する存在が神様なのかもしれない。 今、一番世界を把握しているのは何かと言えば、それはや…

清潔な白い部屋

豊田市美術館で開催されている「gardens」展へ行った。豊田市美術館には初めて行ったのだけれど、常設展の人気投票があって何とソフィ・カルの作品が1位だった。彼女の作品は一生のうちに一度は見ておきたいものの中の一つなので今度展示があればぜひ見に行…