芝生と西日

春が近づいてくるのは匂いで分かる。難しいことばかり考えていたもしくは、何も考えていなかった。

私の中で蓄積された春の経験、別れとか出会いとか散歩とかプリーツスカートとか好きな先生とかおかっぱの女の子とか鳥がいる河原とか「もう会えないね」「会えないの?がんばれば会えるでしょ」とか宅配ピザとか夜のぬるいビールとか黄色とかレンガの建物の脇の写真の羅列とかもう、匂いに触発されて一気に思い出してものすごくドキドキする。

それで、今年の春もなんだか切ないけれど、一生忘れないとか思ってもきっと3年後には忘れているんだろうな。また難しいことばかり考えて、もしくは何も考えないで忘れていってしまうのだろうか。