洗濯

洗濯が好きで、そして嫌いだ。

洗濯、すなわち、洗うそして濯ぐ。

「濯ぐ」という言葉の持つのどかさと清涼感が好きだ。

最近はフレグランス系の液体洗剤の隆盛により、時代遅れ感がでてしまった粉洗剤の匂いと、白に混じる少量の青の非日常的な鮮やかさが好きだ。

わたしの洗濯機は乾燥機能はついていないが、それでも、スイッチ一つで洗い濯ぎ脱水まで出来る簡潔さ。そして、作動中に発せられる振動と流水音、眠気を誘う穏やかな重低音のリズム。

干すのはよく晴れた日が望ましい。ベランダからはビルで切り取られた空が見える。

小物干しには両端のどちらかに傾かないよう、バランス良く靴下などを洗濯バサミで挟んでゆく。ハンガーは特に留意する点はないのでほぼ無心で。

干された生乾きの衣服が風で揺れるそのスローモーションじみた揺らめきの様を眺めるのが好きだ。

好きなのはここまで。

取り込んで畳む工程が嫌いだ。畳むのは難しくきれいにできない。

そして何より、洗濯をして干して畳んでタンスに仕舞う。わたしが生きて生活を続ける限り、この無限ループ的作業の必要性が常につきまとい、そのループから逃れることが永遠にできないという事実が、洗濯物を干したわたしの晴れやかな胸をほんの少し重くさせる。

でもそれは生活の重み、「穏やかな暮らし」の代償であり、ほかの人にとっては幸せなことなのだろうか。

未だわたしは精神的ノマドであり、日々に根付くことを心の奥底でおそれ嫌悪しているのかもしれない。大人なのに。

書きながら浮かんだ曲はクラムボンがカバーしたおおはた雄一の「おだやかな暮らし」。このアルバムは日本のカバーアルバムの中でも傑作の部類だと思う。

 

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