いまださめず

渋谷地下鉄の改札の前では不細工なおとことおんなが体を密着させそのからだとからだの間にはいかなる意味も物質も入れまいという勢いで佇んでいる。いつもの光景。

すごく不細工なおとことおんなの日やちょっと不細工なおとことおんなの日とかその日その日に佇んでいるおとことおんなはどうやら別々のひと達なのだろうけど結局お前らのそのような差異などわたしの気持ちに塵ほどの影響もあたえずただ君たちがいるとねわたしの周りにまとわりつく空気が少し淀む。そしてその淀んだ空気はわたしの鼻腔から体内に入りきっとわたしの姿形にちょっとした影響をあたえているにちがいない。

茶色というよりは橙にちかく染めた髪の毛のその先を切りそろえ口のなかで咀嚼すればしゃりしゃり、と涼しげな音をたてるだろうと想像する。それで地下鉄に乗っているさ中に見ているものはいつも窓ガラスに反射して妙な色になったすっかり見知らぬわたし。